バイクに乗っていると必ず向き合うことになるチェーンのメンテナンス。小さな部品ですが、バイクの走行性能や寿命に大きく影響する重要なパーツです。この記事では、チェーンの種類から選び方、適切なメンテナンス方法まで徹底的に解説します。
目次
バイクチェーンとは?基本の「き」から押さえよう
バイクチェーンは、エンジンの動力を後輪に伝達する重要な機械要素です。スプロケットと組み合わせて使用され、エンジンの出力を駆動輪に変換する役割を担っています。
特にバイクの場合、サスペンションの上下動に対応するため、チェーンには独特の設計が必要です。出力軸のスプロケット(ドライブスプロケット)とサスペンションアームの揺動軸を同軸にできないため、走行中は常に軸間距離が変化しています。そのため、バイクチェーンには一定量のたるみを設けて、この変動を吸収できるように設計されているのです。
なぜチェーンが重要なのか?
バイクチェーンの種類を徹底比較!あなたのバイクに最適なのは?
バイクチェーンは大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう
シールチェーン
適合車種:250cc以上のバイク
シールチェーンは、中〜大型バイクの標準的なチェーンです。特徴はチェーンのピンとブッシュの間にグリースを注入し、専用のシーリングで密閉している点にあります。

シールチェーンのメリット
- 長寿命: 内部のグリスが保持されるため、通常のチェーンに比べて2〜3倍の寿命
- メンテナンス頻度の低減: 初期なじみ後の調整が少なくて済む
- 安定したパワー伝達: 摩耗が少ないため、長期間安定した性能を発揮
シールチェーンのデメリット
専用工具が必要: カシメタイプが主流のため、チェーンカッター&カシメツールが必要

価格が高め: ノンシールチェーンと比較して価格が2〜3倍
ZX-10Rに使用可能チェーン
ノンシールチェーン
適合車種:125cc以下の小排気量バイク
ノンシールチェーンは、原付やスクーターなど小排気量バイクに多く採用されているシンプルな構造のチェーンです。

ノンシールチェーンのメリット
- 低価格: 初期コストが抑えられる
- 工具不要: クリップタイプなので専用工具なしでも交換可能
- 軽量: シールがないため軽量で摩擦抵抗が少ない
ノンシールチェーンのデメリット
- 短寿命: 定期的な交換が必要(約3,000km前後)
- メンテナンス頻度が高い: 頻繁な注油と調整が必要
- パワーロスが起きやすい: 伸びによるエネルギー損失が大きい
極薄シールチェーン
適合車種:ノンシールからの乗り換えを検討している小排気量バイク
極薄シールチェーンは、ノンシールチェーンとシールチェーンの良いとこどりをした比較的新しいタイプのチェーンです。
極薄シールチェーンの特徴
- トリプルバリア構造: UW RINGの封入リップを3種類持ち、グリース封入性を大幅に向上
- ノンシールと同等幅: スプロケット交換なしでノンシールからの乗り換えが可能
- 軽量設計: 極薄のU RINGを採用し、ノンシールチェーンと同等の重量を実現
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チェーンの伸び – 放置するとどうなる?
チェーンの「伸び」は実際には物理的な伸長ではなく、ピンとブッシュの摩耗によって生じるガタのことを指します。この摩耗が進むと、ピンの位置がセンターからずれ、チェーン全体が伸びたように見えるのです。


伸びたチェーンがもたらす3つの弊害
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1燃費の悪化チェーンの伸びによってフリクションロス(摩擦による損失)が増加し、エンジンパワーが効率よく伝達されなくなります。これにより、同じ距離を走るのに必要な燃料が増加してしまいます。
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2騒音の増加伸びたチェーンはスプロケットにきちんと噛み合わなくなり、走行中に「ガチャガチャ」という不快な騒音を発生させます。この音はバイクの調子が悪いことを知らせる重要な警告サインです。
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3加速力の低下特に小排気量バイクでは、チェーンのガタによってアクセルワークの反応が鈍くなり、加速力が大幅に低下します。急な追い越しやスタートダッシュなど、安全に関わる場面でのパフォーマンス低下は見過ごせません
極端に伸びたチェーンは、最悪の場合走行中に切れる危険性もあります。特に高速走行時にチェーンが切れると、非常に危険な状況になりかねません
チェーンの伸び – 放置するとどうなる?
チェーン価格の徹底比較!コスパで選ぶならどれ?
125ccであるグロムの純正チェーンにて価格の比較をしたいと思います
ノンシールチェーン
強化ノンシールチェーン
シールチェーン
コスパ分析
ノンシールチェーンは安価ですが、約3,000kmごとの交換を考えると、年間走行距離が多いライダーには必ずしもお得とは言えません。一方、シールチェーンは初期投資は高いものの、寿命が長いため長期的に見ればコストパフォーマンスが優れています。
参考: 年間10,000km走行するライダーの場合、3年間のコスト比較
シールチェーン: 5,000円 × 2回 = 10,000円
ノンシールチェーン: 2,000円 × 10回 = 20,000円
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ノンシールからシールチェーンへ乗り換えるメリット
小排気量バイクでもシールチェーンへの交換を検討する価値があります。その理由をご紹介します
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1チェーン寿命が2〜3倍に延長シールチェーンは内部のグリスが保護されているため、ノンシールチェーンに比べて大幅に寿命が延びます。3,000kmで交換が必要だったノンシールチェーンが、シールチェーンなら10,000km以上持つことも珍しくありません。
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2スムーズなチェーンの動きでパワーロス軽減適切に潤滑された状態が維持されるため、動力伝達がスムーズになります。特にアクセルレスポンスや加速性能の向上を実感できるでしょう
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3メンテナンス頻度の大幅減少初期なじみ期間を過ぎると、調整頻度が大幅に減少します。忙しくてメンテナンスの時間が取れないライダーにとって、この点は大きなメリットとなります。
チェーンメンテナンスの正しい方法
チェーンのタイプによって最適なメンテナンス方法は異なります。それぞれのポイントを押さえましょう
おすすめメンテナンス用品
シールチェーンのメンテナンス
シールチェーンは内部にグリスが封入されているため、外部からの潤滑剤はピンとブッシュの間には浸透しません。そのため、メンテナンスの主な目的は「サビの防止」になります。
ポイント
- シール専用のチェーンルブを使用する: シールを傷めない専用の潤滑剤を選びましょう
- 拭き上げを丁寧に: 余分な潤滑剤はホコリを吸着するので、塗布後は必ず拭き上げを
- 定期的な緩み点検: 500〜1,000km毎に緩みを点検し、必要に応じて調整を
ノンシールチェーンのメンテナンス
ノンシールチェーンは内部潤滑を維持するための頻繁なメンテナンスが必要です。
ポイント
- こまめな注油: 200〜300km毎に注油を行う
- 浸透性のあるチェーンルブを選ぶ: ピンとブッシュの間に浸透する潤滑剤を使用
- 洗浄と注油のサイクル: 雨天走行後は特に、汚れを落としてから注油する
メンテナンス頻度の目安
- 通勤・通学利用: 週1回の点検・注油
- ツーリング前後: 必ず点検・注油
- 雨天走行後: 洗浄・注油
チェーン交換の目安とタイミング
チェーンの交換時期を見極めるポイントをご紹介します。
チェーン交換が必要なサイン
- チェーンのたるみが頻繁に生じる: 調整しても直ぐにたるむようになったら寿命のサイン
- 異音の発生: 「キー」「カラカラ」といった異音が出始めたら要注意
- チェーンとスプロケットの噛み合わせ不良: スプロケットの歯が波打ったように摩耗してきたら交換時期
走行距離による交換の目安
- ノンシールチェーン: 3,000〜5,000km
- シールチェーン: 10,000〜20,000km
- 極薄シールチェーン: 7,000〜15,000km
【ポイント】 チェーン交換の際は、スプロケットも同時に交換することをおすすめします。摩耗したスプロケットに新品のチェーンを組み合わせると、チェーンの早期摩耗を招きます。
まとめ:あなたのバイクライフに最適なチェーン選び
バイクのチェーンは「走る」ための命綱です。適切なチェーン選びとメンテナンスで、バイクの性能を最大限に引き出し、安全で楽しいバイクライフを送りましょう。
チェーン選びの3つのポイント
- 走行距離と頻度: 年間走行距離が多ければシールチェーンがおすすめ
- メンテナンス志向: こまめなメンテナンスが苦にならなければノンシールも選択肢に
- 予算: 初期コストと長期コストのバランスを考える
最終的には個人の使用状況やバイクとの向き合い方によって最適な選択は異なります。この記事があなたの参考になれば幸いです。