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バイクタイヤの基礎知識

バイクタイヤの選択は走行安全性と楽しさを左右する重要な要素です。タイヤは路面と接する唯一の部分として、加速・制動・コーナリングなどすべての動作に直接影響します。


タイヤとは

車輪(ホイール)のリムを丸く囲む帯状の構造で、路面・地面あるいは軌道の上を転がる踏面(トレッド)を形成するものの総称。ここでは最も一般的なゴムタイヤについて述べます。


バイクタイヤの重要性

バイクにとってタイヤは単なる消耗品ではなく、走行性能を左右する最も重要なパーツの一つです。路面と接する唯一の部分として、加速・制動・コーナリングなどすべての動作に直接影響します。適切なタイヤ選びは安全性と走行性能の両面で非常に重要です。


バイクタイヤの特徴

オートバイは旋回する際に車体を傾ける必要があることから、自動車用タイヤのトレッド面が偏平なのに対して、オートバイ用タイヤは円に近い断面形状となっています。その結果、オートバイ用タイヤの接地面(コンタクトパッチ)は非常に小さく、名刺1枚分程度とも言われています。非常に小さい接地面積でグリップ性能を発揮させる必要があることから、個々の種類で目的に応じ性格の異なるゴム配合が行われています


タイヤの基本構造

  • 1
    トレッド部分 地面と接触する部分で、パターンが刻まれています
  • 2
    カーカス タイヤの骨格となる部分で、強度を担保します
  • 3
    ビード リムと接する部分で、空気を封じ込める役割があります
  • 4
    サイドウォール タイヤの側面部分で、タイヤの情報が記載されています

バイクタイヤの構造の種類

画像はラジアルタイヤとは。バイクのタイヤの種類、バイアスタイヤとの違い|チューリッヒから


バイアスタイヤ

カーカスが斜めに配置された構造で、古くから使われてきた伝統的な構造です。耐久性や荷重性能に優れていますが、高速走行時の発熱や変形が大きいという特徴があります。現在はクルーザータイプやオフロードバイクに多く採用されています。


ラジアルタイヤ

カーカスが放射状(ラジアル)に配置された構造で、高速走行時の安定性とグリップ力に優れています。サイドウォールが柔らかいため路面の凹凸をうまく吸収し、乗り心地も向上します。スポーツバイクや高速走行を重視するモデルに採用されることが多いです。


ラジアルタイヤ

タイヤ内にチューブを入れて使用するタイプです。昔からあるオーソドックスな構造で、パンク修理が比較的容易です。オフロードバイクや古いモデルのバイクに多く採用されています。リム打ちパンクのリスクがあります。


タイヤの種類


スリックタイヤ(競技用)

レース用スリックタイヤ

舗装されたサーキットでのレース専用のタイヤであり、種類によっては直進時よりもコーナリングの際に接地面積が大きくなるようなトレッド面や三角形の断面形状を持っているものもあります。レース専用のタイヤは、公道での使用は法規により禁じられていて、グリップ性能を発揮する温度も高く、一般道路での走行条件ではコンパウンドが暖まらずにタイヤの性能を発揮できない場合が多いです。レースシーンにおいては、走行前にタイヤウォーマーで温めて使用されます。

主な特徴

溝がほとんどないフラットな踏面
ドライ路面での最大のグリップ力
公道での使用は違法
寿命が非常に短い(数百km程度)
適正温度域が高い(80-100℃程度)

ハイグリップタイヤ

公道走行のうち直線よりもコーナリング走行の比率が多い、よりアグレッシブなライダーのためのタイヤです。このタイヤはあまり長い耐久性を持っていない分、高速コーナリングでのトラクションに優れています。タイヤ表面温度が比較的低くとも良好なグリップ性能を発揮する一方、余りにも内部に熱を持ちすぎた場合にはトラクションを失う可能性もあります。トレッドパターンは中央部から斜め後方に向かうV字状のパターンが、スポーツツーリングタイヤよりも少なめに刻まれていることが多いです。

主な特徴

公道走行可能な高グリップタイヤ
スポーツバイクやネイキッドに最適
寿命は約5,000-8,000km程度
雨天時のグリップも確保
価格は比較的高め
【おすすめの使用シーン】
峠道やワインディングロードを楽しむライダー
サーキット走行も時々楽しむストリートライダー
スポーツ走行を重視するライダー

ツーリングタイヤ

比較的固めのゴムを使用して耐摩耗性を重視した設計となっています。また、広範囲の温度や路面条件に対してグリップ力の差が大きくならないように設計されています。トレッドパターンは雨天時の排水性を考慮したグルーブ(縦溝)がタイヤ中央部に刻まれている場合が多く、ショルダー付近のパターンも路面状況が悪い場合を考慮してサイプ(横溝)を織り交ぜた複雑なものが使用されていることも多いです。

主な特徴

耐久性を重視した設計
あらゆる天候条件で安定したグリップ性能
寿命は約10,000-15,000km程度
コストパフォーマンスに優れる
一般公道での使用に最適
【おすすめの使用シーン】
通勤通学での日常使用
長距離ツーリング
オールシーズン使用するライダー

クルーザータイヤ(アメリカンバイク用)

大きく重いアメリカンバイク(ハーレーダビッドソンなど)の車重を支えるため、頑丈なバイアス構造が採用される場合が多いです。特にリヤサスペンションが装備されていないリジットフレーム車の場合には、タイヤでの衝撃吸収量を確保するためにサイドウォールの高いタイヤが用いられる場合もあります。その一方で、高出力化や高速化が著しい近代的なアメリカンバイク向けに、乗り心地と頑丈さに優れるバイアス構造をベースに、高速性能に優れるラジアル構造のブレーカーコードの概念を採り入れた製品も増えています。

主な特徴

高い荷重能力
安定した直進性能
独特なホワイトウォールなどのデザイン性
振動吸収性に優れる
低速での取り回しやすさ
【おすすめの使用シーン】
ハーレーダビッドソンなどのアメリカンバイク
ロングツーリングを楽しむライダー
安定感を重視するライダー


オフロードタイヤ

大きなブロックパターンのオフロードタイヤ

ブロックパターンとなっていて、軟質ダート、泥、砂、グラベルでのグリップが比較的高い一方、舗装路面での性能は比較的低いです。不整地での走行性能を重視した設計となっています。

主な特徴

大きなブロックパターン
泥や砂地での高いトラクション
耐パンク性を高めた強固な構造
舗装路での騒音が大きい
耐久性よりもグリップ力を重視
【おすすめの使用シーン】
オフロードやダートトラックでの走行
アドベンチャーツーリング
モトクロスやエンデューロ競技


タイヤサイズの見方

タイヤサイズの読み方

バイクタイヤには「110/70-17」のような表記があります。これは以下のように読み解きます:

  • 110: タイヤ幅(mm)
  • /70: 扁平率(タイヤ高さとタイヤ幅の比率)
  • -17: リム径(インチ)

例えば「180/55ZR17」の場合:

  • 幅180mm
  • 高さは幅の55%
  • Zは速度記号(240km/h以上対応)
  • Rはラジアル構造
  • リム径17インチ

タイヤのメンテナンスと交換時期


交換が必要なタイミング

  • 1
    タイヤが摩耗してスリップサインが出る スリップサインとは、残り溝の深さ1.6mmを示す目安です。タイヤがすり減ると溝がなくなり、スリップサインが出ます。タイヤの摩耗による使用限度は残り溝深さが1.6mm以上と決められています。スリップサインが1箇所でも出ると使用してはいけないことが法律で定められています。
  • 2
    ひび割れや偏った摩耗は交換必須 タイヤの側面にひび割れが見られる場合や、タイヤが偏って摩耗している場合は、見た目の残り溝が十分であっても安全のため交換が必要です。
  • 3
    パンク修理が不可な場合 タイヤにパンクが発生し、その損傷が修理限度を超える場合は交換が必要です。特に側面(サイドウォール)のパンクは修理不可とされています。
  • 4
    製造年から5-7年経過 タイヤは使用していなくても経年劣化します。一般的に製造から5-7年経過したタイヤは、たとえ溝が残っていても交換を検討すべきです。製造年月はタイヤのサイドウォールに「DOT」の後に続く数字で確認できます。

タイヤの寿命を延ばすコツ

  • 1
    適正空気圧の維持 低すぎる空気圧はタイヤの早期摩耗の原因になります。高すぎる空気圧はグリップ力の低下を招きます。
  • 2
    急発進・急制動を避ける 激しい運転はタイヤの摩耗を早めます。特にパワフルなバイクでは注意が必要です。
  • 3
    路面状態に注意 荒れた路面や障害物はタイヤにダメージを与えます。可能な限り良好な路面を選んで走行しましょう。
  • 4
    定期的な点検 異物の刺さりや傷がないか、定期的に点検することで小さな問題が大きな問題になる前に対処できます。

日常のタイヤメンテナンス

Version 1.0.0

空気圧管理はタイヤ寿命にとって大切なポイントです。空気圧が不足していると、タイヤは走行中に大きく変形し、地面に押し付けられることで摩耗しやすくなって、タイヤ寿命が縮んでしまいます。バイクのタイヤは空気圧で操作性もグリップ性もすべてが変わります。


適正空気圧の確認方法

  • 1
    タイヤが冷えている状態(走行直後は避ける)で測定します
  • 2
    メーカー推奨の空気圧はバイクの取扱説明書やフレームに記載されています
  • 3
    一般的な目安:前輪 225kPa (2.25kg/cm²)、後輪 250kPa (2.50kg/cm²)
  • 4
    二人乗りや荷物が多い場合は10-20%増しにします

保管方法

タイヤはゴム製品なので、直射日光や雨が当たる場所に置いておくと劣化してしまいます。シートカバー等をかけて直射日光を避けましょう。

  • 1
    タイヤを地面から浮かせる(スタンドを使用)
  • 2
    適正空気圧の80%程度を維持する
  • 3
    外線、オゾン、高温、油分から保護する
  • 4
    月に一度は車体を動かして同じ部分が地面と接触し続けないようにする

前後タイヤの特性と交換時期

バイクではフロントとリアでは役割が大きく異なるため、タイヤローテーション(前後入れ替え)は行いません。通常、リアタイヤの方が駆動力を伝える役割があるため早く摩耗します。前後のタイヤは異なるサイズや特性を持っていることが多く、それぞれの役割(フロントは操舵性、リアは駆動力と安定性)に合わせて設計されています。交換時期もそれぞれ個別に判断しましょう


バイクタイヤ選びのポイント


走行スタイルに合わせた選択

  • 【街乗り中心】 ツーリングタイヤが最適です。耐久性が高く、あらゆる天候条件で安定したパフォーマンスを発揮します。
  • 【ワインディング走行】 ハイグリップタイヤが適しています。コーナリングでのグリップ力を重視するなら、多少耐久性を犠牲にしても価値があります。
  • 【ロングツーリング:】 耐久性と快適性を重視したツーリングタイヤが最適です。
  • 【オフロード】 走行する地形に合わせたオフロードタイヤを選びましょう。

日本市場での人気タイヤブランドと特徴

ブランド 特徴 オススメモデル 価格帯
ブリヂストン 日本の道路事情に合わせた開発、高い信頼性 BATTLAX シリーズ 中~高
ダンロップ 幅広いラインナップ、コストパフォーマンスに優れる SPORTMAX シリーズ
ミシュラン 高いグリップ力と走行安定性 PILOT シリーズ 中~高/td>
ピレリ スポーティな走行感、高いコーナリング性能 DIABLO シリーズ 中~高
メッツラー 耐久性とウェットグリップのバランス ROADTEC シリーズ
IRC コストパフォーマンスに優れる国産タイヤ ROAD WINNER シリーズ 低~中

タイヤに関するよくある質問

タイヤの製造年月日はどこに書いてありますか?
タイヤのサイドウォールに「DOT」の後に続く数字とアルファベットの中に記載されています。例えば「DOT XX XX XXX 1023」なら2023年第10週(3月上旬)の製造を意味します。
チューブレスタイヤとチューブタイプの違いは?
チューブレスはタイヤ自体が気密性を持ち、直接リムに装着します。チューブタイプはタイヤの中にチューブを入れて使用します。チューブレスはパンク時の急激な空気抜けが少なく、軽量という利点がありますが、修理はやや複雑です。バイクではスポーツモデルやロードスポーツに多くチューブレスが採用され、オフロードバイクやクラシックモデルにはチューブタイプが多く使われています。
ラジアルタイヤとバイアスタイヤはどう違いますか?
ラジアルはカーカス(骨格)の繊維がタイヤの円周に対して垂直(放射状)に配置されていて、高速走行性能に優れます。バイアスは斜めに配置されており、耐荷重性と耐久性に優れています。
タイヤの空気は何を入れるべきですか?
通常の空気で問題ありません
タイヤの片減りの原因は?
主な原因は以下の通りです
空気圧の不適切な管理(低すぎる場合が多い)
サスペンションの調整不良
アライメントのズレ
乗車スタイル(特定のバンク角での走行が多い)
車体の荷重バランスの偏り

まとめ

適切なタイヤ選びで安全で楽しいバイクライフを

バイクタイヤは単なる消耗品ではなく、走行安全性と楽しさを左右する重要なパーツです。タイヤの選択は、バイクの種類、走行スタイル、季節、路面状況など多くの要素を考慮する必要があります。定期的な点検とメンテナンスを行うことで、タイヤの性能を最大限に引き出し、安全に走行を楽しむことができます。

愛車に合ったタイヤを選び、適切なケアを行うことで、バイクライフがより充実したものになることでしょう。

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