Pocket

今回はHonda Gromのスパークプラグ交換方法を詳しく解説します。以前の記事で解説したスパークプラグの基礎知識をベースに、愛車のグロムが2万キロを超えたのを機に実際の交換作業を行いました。この記事では、作業に必要な工具から手順、注意点まで徹底的に解説します。


なぜ今スパークプラグ交換が必要なのか

スパークプラグは走行距離や使用状況によって徐々に消耗していきます。私のGromは走行距離が2万キロを超え、以下のような症状が現れ始めていました

アイドリング時の微妙な不安定さ
加速時のレスポンスがやや鈍い
冷間始動時に少し時間がかかる

これらはすべてスパークプラグの劣化が原因かもしれないサインです。特にGromのような小排気量エンジンは、スパークプラグの状態がパフォーマンスに大きく影響します。ホンダの推奨では1万キロごとの交換となっていますが、実際には使用状況によって異なります。

ワンポイントアドバイス
ヒート値の詳しい選び方やチューニングテクニックについては、上級ガイドで解説しています!

Gromの適合スパークプラグ

Honda Gromに適合するスパークプラグには以下のようなものがあります


純正相当品

NGK CPR6EA-9

特徴: 標準的なニッケル合金プラグ

NGK CPR7EA-9

特徴: 暑い地域や高負荷走行向け(1段冷え型)

長寿命・高性能タイプ

NGK CPR6EAIX-9S

特徴: イリジウムプラグ(今回使用)

DENSO IU22

特徴: イリジウムパワープラグ

NGK DCPR6E

特徴: プラチナ合金プラグ

今回は純正相当品よりも耐久性と性能が高いイリジウムプラグ「NGK CPR6EAIX-9S」を選択しました。イリジウムプラグは通常のプラグと比べて以下のメリットがあります

長寿命(標準プラグの約2倍)
安定した火花
燃費向上の可能性
加速性能の向上

価格は標準プラグの約2倍ですが、交換頻度が少なくなることと性能向上を考えるとコストパフォーマンスは高いと言えます


選んだプラグと必要な工具

NGK CPR6EAIX-9S

特徴: (イリジウムIXプラグ)

KTC B3A16P : 16mmプラグレンチ

KTC BR3E-S(9.5mm/3/8インチ) : ラチェットレンチ

特徴: プラチナ合金プラグ

KTC BE3-EX2P : エクステンションバー

必要に応じて

E-Value ETR3-25 : トルクレンチ

ワコーズ THC スレッドコンパウンド : 焼き付き防止グリス

特徴: 焼付き防止の為・薄く塗る

ナカバヤシ(Nakabayashi) フエルネット エアダスター ノンフロン スパウトタイプ 350ml 3本 FNC-JB01S-3P

特徴: 砂利など、シンダー内部に入るとまずいものを除去する為

日本製紙クレシア(NIPPON PAPER CRECIA) SCOTT(スコット) プロショップタオル ライトデューティ 60枚

特徴: 手軽に持ち運びが出来るロールタイプ。絞って濡らして拭ける高強度素材。風合いはふんわりやわらか。

これらの工具はGromだけでなく、他の車種でもメンテナンスにも使えるので、持っていると便利です。特にトルクレンチは適切な締め付け管理のために強くおすすめします

基本に立ち返りたい方へ
スパークプラグの基本知識や一般的な選び方、交換方法については、基本ガイドもご参照ください
バイク用スパークプラグ完全ガイド – 種類・選び方から交換方法まで


交換の準備

作業を始める前に以下の準備をしておきましょう

1
バイクが冷えていることを確認
  • エンジンが熱いとやけどの危険があります
2
平らで安定した場所に駐車
  • センタースタンドが理想的ですが、サイドスタンドでも可
3
作業スペースの確保
  • 十分な明るさと作業スペースを確保
4
必要な工具と新しいプラグを用意
  • 作業中に探し回らないように


スパークプラグ交換手順


1. プラグ周りの清掃

まず、プラグ周辺を丁寧に清掃します。ここは特に重要なステップです。

プラグはエンジン内部につながっています。周囲に砂やほこりが残っていると、プラグを外した際にエンジン内部に異物が入り込み、故障の原因になります。

手順

  • エアダスターや清潔なウエスでプラグ周辺のゴミや汚れを取り除く
  • 特にプラグの窪み部分に溜まったゴミをしっかり除去

プラグキャップの取り外し

Gromのプラグキャップは以下の手順で外します:

手順

  • プラグキャップをつかみ、真っ直ぐ引き抜く
  • ねじったり斜めに引っ張ったりしない(破損の原因)
  • キャップ内部の端子部分を触らないよう注意
キャップを引く際は、コードを引っ張らずにキャップ本体をつかんで引くことが重要です。

プラグレンチとラチェットハンドルを使って古いプラグを取り外します


3. 古いプラグの取り外し

手順

  1. 16mmプラグレンチをプラグにしっかりと差し込む
  2. ラチェットハンドルを取り付ける
  3. 反時計回り(左回り)に回してプラグを緩める
  4. 緩んだら手で回して完全に取り外す
最初は固い場合がありますが、急激な力をかけずに徐々に力を加えて緩めましょう。


古いプラグの状態確認

取り外したプラグを観察し、エンジンの状態を診断します

確認ポイント

  • 電極の色(正常な場合は薄茶色〜茶色)
  • 電極の磨耗具合
  • カーボンや油の付着
  • 異常な焼け跡がないか

今回取り外したプラグは、全体的には良好な状態でした。薄い茶色の部分が多く、少し白っぽい部分もありましたが、概ね正常範囲内の焼け色でした。


4. 新しいプラグの準備

手順

  1. 新旧プラグのギャップを比較(変化がないか確認)
  2. プラグのネジ山に焼き付き防止グリスを薄く塗布
  3. グリスが電極部分に付かないように注意

重要:焼き付き防止グリス(THCスレッドコンパウンド)を使用することで以下のメリットがあります:

  • カジリ・溶着を防止
  • サビ、腐食による固着を予防
  • シール性の向上
  • 締付けトルクの均一化


5. 新しいプラグの取り付け

準備した新しいプラグを取り付けます:

手順

  1. プラグを手でまっすぐにねじ込む(斜めにならないよう注意)
  2. 手で回せなくなったら、プラグレンチを使用
締めすぎるとネジ山を破損する恐れがあります

6. トルクで締め付ける

トルクレンチで規定トルク(10~12Nm)まで締め付け


プラグキャップの取り付け

プラグキャップを取り付けます

手順

  1. プラグキャップをプラグの上にまっすぐ押し込む
  2. カチッと音がするまでしっかり押し込む
  3. 軽く引っ張って確実に固定されているか確認

8. 動作確認

交換作業完了後、エンジンを始動して動作確認を行います:

確認ポイント

  • エンジンの始動性
  • アイドリングの安定性
  • 異音がないか
  • 加速時の応答性


新旧プラグの比較と診断

取り外した古いプラグと新しいプラグを比較することで、エンジンの状態や使用状況を把握できます。

古いプラグの診断

観察結果

  • 電極の色:大部分が茶色で良好な状態
  • 電極の磨耗:2万キロ走行で明らかな磨耗あり
  • 汚れ:カーボン付着は少なめ

診断:全体的に良好な燃焼状態だったと判断できます。白っぽい部分が若干あることから、少し混合気が薄い(リーン)傾向にあった可能性もあります。


新しいプラグの特徴

NGK CPR6EAIX-9Sの特徴

中心電極:イリジウム合金(耐久性向上)
電極径:0.6mm(標準プラグより細い)
放電効率:従来型より優れている
耐久性:標準プラグの約2倍


交換後のチェックポイント

プラグ交換後、以下のポイントを確認しましょう

  • 1
    エンジン始動性
    スムーズに始動するか
  • 2
    アイドリング安定性
    安定したアイドリングを維持できるか
  • 3
    加速応答性
    アクセルに対する反応が良好か
  • 4
    燃費
    交換前後で変化があるか記録しておく
  • 5
    異音
    異常な音がないか

私の場合、交換後は特に始動性とアイドリングの安定性が向上しました。加速時のレスポンスも若干良くなった印象です


交換頻度とメンテナンスサイクル

推奨交換頻度

Gromのスパークプラグ交換頻度の目安は以下の通りです:

  • 標準プラグ(CPR6EA-9など):10,000km
  • イリジウムプラグ(CPR6EAIX-9Sなど):20,000km
  • 使用環境による調整
    • 市街地中心の短距離走行:頻度を上げる(-20%程度)
    • 高速道路中心の長距離走行:標準周期で問題なし
    • 過酷な条件(オフロードなど):頻度を上げる

プラグの点検タイミング

以下のタイミングでプラグ点検を行うことをおすすめします:

  1. 定期点検時:6,000km毎の定期点検時
  2. 始動性低下時:始動が悪くなったと感じたとき
  3. 燃費悪化時:著しく燃費が落ちたとき
  4. エンジン不調時:加速不良やアイドリング不安定時


よくある質問


まとめ

Gromのプラグ交換は初心者でも可能ですか?
はい、グロムのプラグは非常にアクセスしやすい位置にあるため、基本的な工具さえあれば初心者でも十分に交換可能です。この記事の手順に沿って慎重に作業を進めれば問題ありません。
イリジウムプラグは価格が高いですが、その価値はありますか?
A: イリジウムプラグは確かに標準プラグの約2倍の価格ですが、寿命が長く性能も安定しているため、長期的に見ればコストパフォーマンスに優れています。特に頻繁なメンテナンスが難しい方や、性能を重視する方にはおすすめです。
プラグ交換後、性能に変化はありましたか?
私の場合、特に始動性とアイドリングの安定性が向上しました。加速時のレスポンスもやや改善されたように感じます。ただし、劇的な変化というよりは「本来の性能に戻った」という印象です
冬と夏でプラグを使い分ける必要はありますか?
Gromの場合、基本的に使い分けは不要です。ただし、極寒冷地で主に使用する場合は1段階熱価の低いプラグ(より熱いプラグ)を検討する価値があります。逆に、高温下での高負荷走行(サーキット走行など)が多い場合は1段階熱価の高いプラグ(より冷たいプラグ)が適切な場合もあります。
トルクレンチがない場合、どのように締め付ければよいですか?
トルクレンチを強く推奨しますが、ない場合は「手で回せなくなった位置から約1/4〜1/2回転」を目安に締め付けます。ただし、これは経験則であり、正確なトルク管理ができないリスクがあります。

まとめ

グロムのスパークプラグ交換は、初心者でも十分に取り組める基本的なメンテナンス作業です。プラグがむき出し状態でアクセスしやすいため、キャップを外すだけでプラグに到達できる点が大きなメリットです。

作業のポイントをまとめると:

  1. 適切な工具の準備:特に16mmプラグレンチとトルクレンチ
  2. 清掃の徹底:エンジン内部に異物が入らないよう注意
  3. 正しいトルク管理:10〜12Nmでの締め付け
  4. 定期的な点検:性能維持のために1万〜2万km毎の交換

最後に、どんなバイクでもスパークプラグは性能を維持するための重要なパーツです。グロムのような小排気量エンジンでは特にプラグの状態が直接性能に影響します。定期的なメンテナンスで最高の走行フィーリングを保ちましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA